【キックオフイベント開催レポート】
地域の中堅・中核企業支援プラットフォーム
全国キックオフシンポジウムin九州
〜新事業展開の秘訣と効果的な外部連携とは〜
地域の中堅・中核企業のさらなる成長支援のために、新規事業展開などを支援する地域・テーマごとの支援プラットフォーム事業のスタートとなる、全国大のキックオフシンポジウムを7月26日に福岡で開催しました。当日は、九州エリアを中心とした中堅・中核企業の皆様のほか、地域の支援機関の皆様、行政機関の皆様にご参加いただき会場もいっぱいに。
当日は、株式会社ゼンリン 代表取締役社長 髙山善司氏による基調講演、地域の中堅・中核企業、金融機関、行政の関連団体といったさまざまな顔ぶれによる パネルディスカッションを開催。これからの未来に向けて、新たな事業展開のヒントとなる貴重な話に参加者は熱心に耳を傾けました。
当日の詳しい様子は以下のアーカイブ動画をご覧ください。
第一部
開会の挨拶は、経済産業省 経済産業政策局長 藤木俊光氏。
長らく低迷を続けていた日本経済も、ようやく明るい兆しが見えつつある今、地域の経済を支える中堅・中核企業の貢献度と成長力は目を見張るものがあり、国会においても産業競争力強化法を改正し、中堅企業向けのさまざまなメニューを新たに設け、さらなる支援を行っていく方針を固めたことを報告。
参加企業には、本事業並びにさまざまな取り組みを積極的に活用いただき、多様な意見交換の場としていただきたいとの、挨拶がありました。
続いて、経済産業省 経済産業政策局 地域経済産業政策課 木本一花氏より本事業の趣旨説明が行われました。
事業詳細の説明については本サイトTOPページやアーカイブ動画よりご確認ください。
続いて、九州・福岡の経済の牽引役となる企業の一つでもある、株式会社ゼンリン 代表取締役社長 髙山善司氏による「事業の枠を超える共創戦略〜守りながら攻める経営〜」と題した基調講演が行われました。
髙山氏:
中堅企業から大企業へということで、僭越ながらお話させていただきます。
弊社は福岡県北九州市に本社を置き、主に住宅地図やカーナビの地図などを製作してまいりました。従業員は関連企業も連結すると 3,000 名を超え、日本は沖縄から北海道、海外も合わせると 70 以上の拠点があります。1980 年代はアナログの住宅地図帳をメインとしたプロダクトアウトビジネスで市場を拡大していきましたが、手作業であった地図製作を自動化するシステムの開発を行い、電子化することでコアビジネスを守ることに成功しました。1990 年代はインターネットもまだあまり普及していない時代に、社内システムに地図情報が欲しいというユーザーのために、システム開発し提供を開始しました。
そして、地図をデータベース化したことをきっかけに、自動車メーカーや電機メーカー各社からお声がけをいただくようになり、これがカーナビの始まりとなりました。ナビシステムの黎明期とも言えるこの時代が、経営の攻めの時だったと思います。 時代の流れとともに、地図のインフラ化も進み、さまざまな業種の企業と親和性の高いビジネスをさせていただいています。移動時の地図利用が当たり前になった今、これからはどこにでも行くことが可能なネットワークデータをしっかりと構築していこうと準備している段階です。
これからの企業に必要なのは新たな領域への挑戦です。世の中が求めるものは 「役に立つモノ・コト」から「意味のあるモノ・コト」へと変化しようとしています。そんな中、私たちが活動方針として掲げているのは「企業共創」と「地域共創」です。一社で完結するビジネスが少なくなってきた今、企業同士が共創し、さらには地域を巻き込み win-win-win-win になるまでやらないといけない。そういう時代になってきています。
また、弊社では M&A という形でマーケティングに関連する企業にグループに加わっていただき、マーケティング事業の確立と拡大を図っています。さらに、コーポレートベンチャーキャピタルを設立し、地図の分野以外にもシナジーがあるベンチャー企業へ出資という形で支援を行っています。まだまだ発展途上ではありますが、いろいろな取り組みを行いながら、地域や企業と共創していくことが企業の発展には大切だと考えています。
第二部
続いて開催されたのが5名のパネリストによるパネルディスカッションです。
「中堅・中核企業の新事業展開に関するパネリストの取組、課題、工夫」と題して行われ、さまざまな立場からの興味深いお話を紹介していきます。
<登壇者>
株式会社ゼンリン代表取締役社長 髙山善司氏
株式会社正興電機製作所 二村秀信氏
株式会社福岡銀行営業統括部部長 秋山愼一郎氏
公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)産学連携センター長 兼 中小企業支援センター長 本島直樹氏
モデレータ:東京大学大学院 工学系研究科 教授 各務茂夫氏
各務氏:
基本的にはお一人ずつ自己紹介も含め、それぞれにお話をうかがっていきたいと思います。
最初に少しだけ簡単に私の紹介をさせていただきます。大学の中でも、特にスタートアップ支援や産学連携、大企業との連携といったものに20年ほど携わってまいりました。その間、大学のベンチャーも随分様変わりしており、2022年11月に政府がスタートアップ育成5カ年計画を作成し、大きな進展が見られるようになりました。例えば、東京大学に関連した2社のベンチャーキャピタル投資会社だけでも千数百億のリスクマネーの供給を行うなど、20年前に考えられないような現状となっています。
本日は中堅企業、特に地域の中堅・中核企業がさらに羽ばたくにはどうするのか、をテーマにお話をうかがっていきます。まずは本島様、お願いします。
本島氏:
公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の本島です。簡単に北九州市やFAISの取り組みを紹介させていただきます。北九州市では、北九州市に本社がある企業の売上高を30億円まで、30億円〜100億円、100億円〜500億円と分けており、中でも30億円〜100億円、100億円~500億円の売上高の企業が約280社ほどあります。これらの企業を重点的に支援していこうという施策を今年から始めました。現在、数十社ほどヒアリングを行い、今後の成長に向けた課題の洗い出しを行いながら、必要な施策を一緒に考えていきたいと思っています。
北九州には理工系の国公立大学、私立大学が一つのキャンパスに集まる学術研究都市があります。その学研都市のコーディネーター役として、私たちが活動しています。我々もさまざまなプラットフォームを運営しており、現在は業種や業態別に4つのプラットフォームを運営しています。昨年から特に力を入れているのが北九州GX推進コンソーシアムです。すでに238社が参加されており、企業の関心も非常に高く、産官学金が一体となってGXを推進していくという取り組みとなっています。共通する課題、経営者層に絞った勉強会などにも力を入れています。
私見ではありますが、会社を大きく成長できるのは経営者次第ではないかと考えています。経営者のリーダーシップ、ビジョンも非常に大事で、新事業を展開したくても人材不足、人手不足のため進められないという実態をよく耳にします。将来を見据えた計画というのが必要になってくると感じています。
各務氏:
本島センター長ありがとうございました。では続きまして福岡銀行の秋山様よろしくお願いします。
秋山氏:
福岡銀行の営業統括部に所属しております秋山です。私は福岡フィナンシャルグループの法人営業の企画を行っております。福岡フィナンシャルグループは、九州を営業基盤とする広域展開型の金融グループになります。傘下の銀行は5つ、従業員は約8,000人、資金は21兆円、貸出金は18兆円と関連会社は合わせて23社あり、拠点数は国内九州を中心に453店舗、海外はアジアを中心に8箇所に駐在所を構えています。
本題の地域支援についてですが、現在、我々の地域にも、経済はもちろん少子高齢化、コロナ、円安とさまざまな変化が現れていると感じています。その中で、地域企業に求められているのは、新規事業の開発や企業自体の変化や進化だと感じています。行政に補助金の立案や企業誘致などで地域を支えていただいているので、金融機関としての役割は地域の課題を解決して、企業の皆さんの成長を加速させていくことだと思っています。
私たちの地域企業支援の取り組みとして、地域企業の事業変革のサポートと、スタートアップの成長サポートを目的に、地場企業とスタートアップ企業、自治体、大学などが一緒になって事業創出や変革、地域の発展を行うためのイベントスペース、コワーキングスペースなどを備えた施設を作りました。この場所を活用し、コミュニケーションを図ることで、新たな事業へと繋がる取り組みを行っています。私たち福岡フィナンシャルグループでは、ファイナンスは元より、M&Aや事業成長戦略をサポートしてきました。新規事業に取り組む企業様には長期に渡り、課題抽出から財務など徹底的にディスカッションし、実証実験まで含め伴走させていただいています。今回のプラットフォームとも連携しながら、企業の皆さんの変革支援や新しいビジネスの創出に対して力強くサポートしていこうと考えています。
各務氏:
秋山さん、ありがとうございました。では続いて正興電機製作所の二村様、よろしくお願いします。
二村氏:
私どもは創業が大正10年、百年を超える歴史があり、売上高は270億円、従業員は連結で約1000名程度となります。創業当時は日立製作所の九州の代理店としてスタートした会社で、その後、ものづくりを始め、やがて制御システム、情報関連へと事業領域を広げてまいりました。東証一部への上場をさせていただき、昨今はデジタルにも力を入れ、ベンチャー企業への出資なども進めています。主なセグメントは電力会社向けの部門、環境エネルギー関連の部門、情報関係と3つの柱で売上の8割程度を占めています。
具体的には、発電所や変電所の送電監視システムや制御システムの開発、配電線の地中化に関連する配電機器の製作など、電機設備関連のシステムや機器製作を行っています。私たちが中期経営計画の基本方針として掲げるのはサステナビリティ経営です。デジタル技術の活用、カーボンニュートラルへの取り組み、そしてグループ総合力の発揮にあります。また、昨今の人手不足においては、設備の保守点検などできるだけ人手をかけないサービスの提供などを展開していきたいと考えています。
今後の成長を遂げるべきカギは、いかに外部と連携していくかということだと思います。FAISの本島センター長からもありましたが、私たちも学研都市の一角にオフィスを開設しFAISの協力をいただきながら、事業の拡大、事業間コラボなどの展開などに取り組んでいます。
各務氏:
二村さん、ありがとうございました。髙山社長にお聞きします。3社の取り組みを聞いて、何か印象に残るキーワードなどはありましたでしょうか?
髙山氏:
福岡銀行さんのお話など、我々も各拠点で地域の情報を収集していますが、その情報収集がなかなか難しいという実態がある中、プラットフォームをはじめ、さまざまな業界や業態の人たちと意見交換ができ、コミュニケーションを図りながら相互理解が取れるのはとても素晴らしいと思います。また、そうしたやり取りの中でサービスの課題などの炙り出しができるのも、非常に重要なのではないかなと思いました。
各務氏:
髙山社長と二村さんにお伺いしたいのですが、さまざまな技術進展などがある中、人材獲得戦略などはどうされていますか?
髙山氏:
人材に関する問題が今は一番厳しいですね。新卒に限らず、例えば四半期ごとの入社といったものがあっても良いのかなと思っています。大学を卒業後にインターン的なものを経験できるような制度があると、企業側もリクルーティングしやすい状況が生まれるのではないかと思います。
二村氏:
我々も新卒や中途採用では追いつかない場合があります。スピード感も必要ですので、外部連携という形も一つの選択肢と考えています。
各務氏:
本島さんに伺います。新しい新規事業を立ち上げる際に、中堅・中核企業の後押しをするというのが本島さんのお立場かと思いますが、企業が持っていない機能を付加するといった支援に関してどのような取り組みがございますか?
本島氏:
例えば、カーボンニュートラルといったものは、社会実装していくためには投資が前提となりますので、金融機関とのマッチングなどを模索しています。GXに関心の高い金融機関さんとコンタクトをとったり、投資に意欲的な企業との連携を図ったりといった感じです。
各務氏:
中堅企業から大企業に成長するにはM&Aなどをベースにしながらという場合もあるかと思います。そういう部分において、金融機関としてはどういった支援がありますか?
秋山氏:
基本的にはお客様の成長戦略を描く中で必ずM&Aというのは出てきます。M&Aの戦略をたてるために、時間をかけてじっくりとディスカッションを重ね、戦略を立てていきます。どちらにとっても良い結果となるよう、単純にファイナンスということではなく、銀行としてお客様の思いに寄り添うという形で動いています。
各務氏:
最後に、本島さんと秋山さんに伺います。スタートアップやコンソーシアムなどの連携など、実をあげるのが難しいのですが、成果を上げる時の勘所などは何でしょうか?
本島氏:
日々、互いに対話をすることだと思います。
秋山氏:
極力テーマを絞り、課題への対策をピンポイントで行うと、案外協業はうまくいくような気がします。
各務氏:
皆様、ありがとうございました。本当に重要なポイントがあり、質の高いお話だったと感じています。
新規事業への取り組みとして大切にすることなど、参加者にとっても明日へのヒントとなる有意義なディスカッションとなりました。
最後には、地域・テーマ別に全国各地に立ち上げた21の支援プラットフォームの運営を行う事業者にお越しいただき、各プラットフォームの取組概要をご紹介いただきました。
そしてシンポジウム終了後にはネットワーキングの時間を設けて、参加者・登壇者・プラットフォームの運営事業者が交流を行いました。
今後も各プラットフォームが主催するセミナーを全国各地で随時実施していきます。本サイトでも開催情報を発信しておりますので、ご確認くださいませ。
対象企業の皆様のプラットフォームへのご参加を心よりお待ちしております。